現段階の計画


「かたつむり」の新しい作業所は、利用者と職員の最大80人の特大家族のための家のような場所です。

就労継続支援作業所には、利用者が就労訓練として秩序ある生活を送りやすいシンプルな空間の配列が必要です。一方で、利用者はこの作業所でとても長い年月を過ごすため、日々の環境の変化を豊かに感じられる多様な空間でなくてはなりません。新作業所「かたつむり」は、この一見相反する2つの要求を共に満たすことを主題として設計されています。

新作業所の敷地は、海寄りの平地の住宅地から斜面地の田畑に切り替わるあいだに位置しています。住宅地から敷地に続くなだらかな坂道の脇には今出山からの小川が流れ、現在の作業所と違い周辺の交通量も少なく、ゆっくりとした時間が流れる場所です。

作業室の眺望と日照、日々の送迎や資材の搬出入の動線、送迎乗降場所の冬期の凍結、朝日を浴びながらの準備体操などを考慮して、建物は敷地の南側に置かれ、入口は東側の大きく高い庇の下に設けられました。

建物本体は、周辺環境をやわらかに映し季節や天気によって豊かに表情を変え、日々フレッシュな通勤・通所の体験を生み出します。対照的に、求心性・象徴性のある大きな赤い軒は「かたつむり」の入口を明確に示し、作業所での一日の始まりと終わりの意識を整えます。

北側に集められた機能的な部屋は、天井裏の設備スペースや収納スペースの必要高さ順に並び、天井高2.2mの静養室から軒高4mの搬出入口までが効率的に配置されています。

利用者と職員が長い時間を過ごす作業室/食堂は24m x 5mの長いワンルームです。徐々に変化する天井高、室内からの視線と周囲の地形環境に応じて調整された連窓、一定のリズムで配置された梁が呼応することで、ひと部屋の中に様々な空間体験を生みます。梁にはカーテンや照明がつき、みんなで一体感をもって朝礼や食事をしたり、チームに分かれて集中して作業をしたり、気分や体調次第では一人きりで過ごしたり、という多様な要求に合わせて空間を設えることができます。この部屋の中で、利用者たちは「朝礼&体操 - 作業 - 昼食 - 作業 - おやつ&終礼」という秩序立ったルーティーンをスムーズに守りつつ、時間帯・天候・季節や座る位置の違いによって毎日フレッシュな意識で生活ができます。

敷地面積:1538.48m²(466.21坪)
建築面積:282.11m²(85.49坪)
延床面積:264.16m²(80.05坪)
構造形式:木造在来工法
規模  :平屋